まるで呼吸するように煙を吐く浅間山をみるたびに、この土地が生きていることを感じる。
「火を吹く燃える岩」という意味をもつ「アサマ」は、その名の示す通り脅威の存在でありながら、
浅間高原一帯の特異な自然環境と豊かな生態系の源でもある。
ぼくたちは活き活きと躍動する、圧倒的な自然の中に暮らしている。
現代の都市生活において、安全という名目のもとに遠ざけられてしまった「はだかの火」。
暗がりを照らすだけなら、寒さを和らげるだけなら、より安全で便利なエネルギーがあるだろう。
だが、ゆらめく炎だけが灯せる景色、温められる空間が、ここにはあるのだ。
スウィートグラス・キャンプ場の奥には、1783年 江戸の大噴火の際
火砕流の「押しからかろうじて残った」という意味をもつ「おしぎっぱの森」が広がる。
すっかり葉も落ちた晩秋の森に、火と人とが集い、幾本もの煙が立ち昇る。
それはぼくらの未来へとたなびき、それぞれの想いを伝える
狼煙(のろし)となるだろう。